仕事をしていると、やたらと頭の回転が速い人がいるのわかりますか? 現状の課題を素早く整理してどんどん仕事を引っ張っていけるような人。この人たちの頭の中ってどうなっているのかなと前々から気になっていました。
きっと私のような指示待ち族とは違って、「地頭がいい」のでしょうね!! でも地頭とは具体的に何だろうか、ひょっとしたら成長できるヒントがあるかも、と思ったことが今回の記事の発端です。
Contents
こんな人におすすめ
・地頭がいいとは何か理解したい
・地頭がなぜ必要なのか知りたい
最初に結論
実は地頭という言葉に対して明確な定義はありません。
そのため、色々な人が色々な定義をしています。
とりあえず代表的な例として、『地頭力を鍛える』から引用すると
問題解決をするうえでの基本となる考える力
を意味するとされています。
更にこの地頭は3つの思考力と3つのベースの力から構成されています。
また、地頭のよさというのは生まれつきの才能・素質によるものだというイメージがありますが
地頭は鍛えることはできます。これは「フェルミ推定」を解くのが効果的です。
以下、詳細に解説していきます。
地頭とは何か
3つの頭の良さの違い
皆さんは「頭がいい人」といわれるとどんな人をイメージしますか?
頭がいい、というのはどうやら3種類存在するようです。
① 知識・記憶力がある「物知り」な人
② コミュニケーション能力抜群の「機転が利く」人
③ 思考能力が高い「地頭がいい」人
上記3点のいずれかにあてはまる人は、世間一般では「頭がいい」といわれる人たちですよね。しかし物知りな人が思考力が必要なパズルが得意とは限りませんし、思考能力が高い人が芸人さんのように面白い切り返しができるとは限りません。
一言で「頭がいい」といっても、色々とタイプがあるようです。その中で「地頭がいい」というのは③の思考力が高い人のことを指すのであって、知識豊富な雑学王を指すわけではないということに注意してください。
地頭力の必要性
平成以前の古い社会で必要とされていたのは、
① 知識・記憶力がある「物知り」な人
でした。これは何故かというとインターネットが存在しなかったので知識を持っているだけで、素人に対して優位に立てたということがあります。
しかし、令和以降の社会ではこの逆で知識はネットからいくらでも仕入れることができます。また、以前よりも時代の移り変わりが早くなっているため知識がすぐに陳腐化します。そのため、①だけあってもだめで、獲得した知識を使って問題解決ができる
③ 思考能力が高い「地頭がいい」人
が必要とされてきています。
私はIT系の仕事に携わっていますが、この業界は特に技術の流行り廃りが急速で①をいくら鍛えてもリターンに見合わないのはその通りだと思います。
それよりも、ネットや書籍から必要な知識だけ引っ張り出してきて、それに③を掛け合わせて問題解決につなげる力が求められていますね。
ちなみに、エンジニアより高い給料をもらっているコンサルタントはまさに③を売りにしています。彼らは①のための勉強もしてますが、それよりも高い地頭力で問題を整理し解決できるから高いフィーをもらうことができているんですね。
次項では地頭力についてもう少し掘り下げてみていきます。
※追記
② コミュニケーション能力抜群の「機転が利く」人
について記述が抜けてますが、これは過去から現代にいたるまで変わることなく必要とされています。ただ、本記事の趣旨とは離れるので詳細は割愛します。
地頭力を構成するもの
地頭力は3つの思考力とそのベースとなる3つの力によって構成されています。ポイントは「結論から」「全体から」「単純に」です。
3つの思考力について
3つの思考力とは以下のことを指します。
1.仮説思考力
2.フレームワーク思考力
3.抽象化思考力
それぞれ簡単に説明していきますね。
仮説思考力
結論から考える力のことです。結論から考えるためには、情報が不足している初期の時点から仮説をたてていく必要があるため仮説思考力といわれています。
例えば、
課題:売上が上がらない
仮説:商品の品質に問題がある(まだ確証はないが)
結論:商品の改良を行う必要がある
というふうに、最初の時点でとりあえずの結論 + 結論を導くための仮説をだすことで最終目的まで効率よく到達することができます。もちろん仮説ですから、あとから修正が必要になることもありますし、その仮説を何故たてたか説明できなくてはいけません。
しかしながら、もしも仮説なしで作業を進めると目的が不明確になり停滞してしまうことが多いので、結果として仮説をたてたほうが問題解決はスムーズに進むのです。
フレームワーク思考力
全体像を俯瞰する力 + 全体像を最適な切り口で切断しフレームワークを使って適切に分解する力のことです。ちなみにフレームワークというと一般的に「KJ法」や「4P」など物事を分析するためのツールを指します。
メリットはチームメンバーの思考の癖や思い込みを取り払うことができるということです。例えば全体は一つしかないので全体像から俯瞰することでメンバー間の認識のアンマッチを防止することができます。同様に、フレームワークを使うことでチーム内の認識のずれを最小化することができます。
フレームワーク思考力があることでチームのコミュニケーションの齟齬を軽減し、ゼロベース思考を加速することができます。会議において物凄く優秀なファシリテーターになれるみたいな能力ですね。もちろん、一人で問題を分析するときにも有効です。
抽象化思考力
単純に考える力です。複雑な問題を抽象化(一般化)することで、過去の経験で得た教訓や既存のモデルにあてはめやすくします。これにより問題解決のための応用力を向上させることができます。
例えば
【状況】
ある難しいシステム改修の締め切りが迫っており、テストの一部工程を省略できないか検討している
【事象の抽象化】
急がなければいけないが、目的地まで遠い状態だ。近道を使うべきかどうか・・・。
【過去の教訓】
急いで物事をなしとげようとするときは、危険を含む近道を行くよりも、安全確実な遠回りを行くほうがかえって得策である(急がば回れ)
【結論】
テストの工程は省略せず、最後までやり切る。リスクヘッジとして締め切りを伸ばせないかお客様に交渉してみる
上の例ではことわざを使いましたが、社内の過去の事例との共通点をあてはめることも多いかもしれません。こうしたことわざや過去事例にあてはめることで、周囲の説明が容易になったり、自分が的確に状況を理解していることを相手に伝えることができます。
簡単なようにも思えますが、実際にやるためには物事の本質を見抜き枝葉の情報をそぎ落とす必要があるため相応の力量が必要です。特にその分野のスペシャリストであるほど保持している情報量が多い分、本質でない部分にとらわれて単純に考えることに失敗するケースがあるようです。
ベースとなる3つの力
前述した3つの思考力の基礎として次の3つの力があります。
論理的思考力
いわゆるロジカルシンキングです。論理をつなげて、ものごとの一貫性や整合性を担保します。ロジックという共有できる言語を使っているので誰がやっても同じ結果になり、その結果を万人が理解することができます(ロジックが正しく繋がっていればですが)。
決して斬新なアイデアや発想につながるものではないため、「守り」のツールとされています。
直観力
論理的思考力とは対をなす力です。前述した思考力のなかで「仮説を立てる」「全体を俯瞰する」「物事を俯瞰する」という話がでてきましたが、これらは全て論理的に説明できるのではなく直観力が必要になってきます。論理的思考力とは異なり、「アート」に近い性質をもち人によって結果が異なります。
新しい概念を生み出し付加価値をつけることにつながるため、「攻め」であるとされます。
この二つの相反する力を使いこなせることが地頭力の良さにつながってきます。
知的好奇心
実は3つのベースの中でも論理的思考力・直観力のさらに下層に位置するのが「知的好奇心」です。基礎の基礎といったところでしょうか。このマインドの有無が地頭力を決定づけるといってもいい一番重要な要素かもしれません。
この知的好奇心には問題解決型(Why型)と知識型(What型)があります。知識型(What型)はいわゆる「クイズ王」に該当します。知識は豊富ですが、そこから先は考えないタイプ。対して、問題解決型(Why型)は知識だけでなく、それがどうして起こるのか深く考えるタイプです。
地頭力にとって問題解決型(Why型)は有益ですが、知識型(What型)は有害になりうるといわれています。これは少し考えれば当然で、地頭 = 「問題解決をするうえでの基本となる考える力」なので、知識だけでなく物事を徹底的に考える志向性が必須になってきます。
ネットで情報を軽く調べておしまい、ということが増えた現代では知識型(What型)に偏ってしまうケースが多く、注意が必要ですね。
地頭力を鍛えるためには
コンサル業界では有名ですが、「フェルミ推定」をたくさん解くのがいいようです。
フェルミ推定はこちらのサイトが詳しいです。
フェルミ推定とは簡単に言うと、「日本に電信柱は何本あるか?」とか「シカゴに郵便ポストはいくつあるか?」など、ぱっと見どう考えたらいいかわからないお題を自分なりに仮説を立てて推理していくという問題です。(使える道具は紙とペンだけなので、ネットで調べるのはNGです。)
ここで重要なのは出した解答が正解と一致しているかどうかではなく、きちんとロジックを組み立ててとりあえずの解答を導き出せるか、ということです。
例えば、「日本に電信柱は何本あるか?」という問題についてフェルミ推定の手法で解くとすると
電柱の本数 = (日本の総面積 30万㎢) × (1㎢あたりの本数 100本) = 3000万本くらい
みたいな感じで考えます。いやいや、「1㎢あたりの本数」= 100本なんて知らないよ、と思われるかもしれませんが、この辺は適当です。市街地や山地などでばらつきはあるでしょうが、ならすと大体1km辺に10本くらいの割合で電柱がたっているだろうと推定しました。
この問題、実は時間制限が3分とか短かったりするので、ある程度えいや!!で決めないと時間切れになってしまうんですね。この辺が限られた時間で仮説を立てながら進めるビジネスと相通ずるところがあります。
興味のある方はぜひ調べてみてください。先ほど提示した解答も別に模範解答ではありませんし、もっといい解答が探せばあると思います。
最後に
曖昧だった「地頭」という言葉もこうして分解してみると具体像が見えてきたのではないでしょうか?「地頭」というと先天的に得られる才能のようなイメージがありますが、決してそれだけではありません。常日頃からあらゆる事象にWhy?を投げかけ、考える習慣をつけることが地頭力をつけることに直結します。
知識だけでは戦えない現代を生き抜くために、地頭力をぜひ鍛えていきましょう。
参考書籍
本記事では以下の書籍を参考にしました。曖昧に考えがちな地頭についてしっかりと解説された本です。また、「フェルミ推定」がなぜ地頭を鍛えるのに有効なのかわかりやすく解説されています。
最近のコメント